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2005年10月14日

条件不利地域でのSS方式による全村FTTH成功事例

テレコムサービス協会の研究会の一環で、茨城県の最北端、城里町の七会支所を尋ねて、うわさのFTTH事業をみてきた。
まずはそのレポートから。最後にまとめて小生の所感を。

1.HTTH導入の背景
 (1)平成7年から電話回線上で音声告知放送を行うオフトーク通信を利用してきたが、老朽化がすすみ、代替の音声告知システムが必要となった。
 (2)インターネット環境が低速なモデムダイアルアップしかなく、それよりほんの少しマシなISDN導入ですらオフトーク通信が邪魔となった。この貧弱なインターネット環境を整備したかった。
 (3)アナログ地上波の難視聴対策としてNHKと民放が共同で共聴施設を建ててくれたが、老朽化してきたにもかかわらずその後継策を示してくれず、このままでは地上デジタル放送を見る手段がない。

2.高速インターネットをどうやって七会村に展開するか。H12年度に検討した内容
 (1)無線LAN:山が障害になる、通信速度が遅い、将来性がない。
 (2)ADSL:局舎から遠いとつながらない、RT-BOX局なのでDSLAM設置スペースなし、オフトーク後継にならない。
    (なお、敢えてADSL事業者としてコメントすると、
     リーチDSLならどんなに遠くてもつながる、RT-BOX局の隣に簡易ボックスを設置して収容可能、
     IPによる音声一斉同報であれば、光でもADSLでもLANデVoiceシステムは動く)
 (3)CATV:同軸回線を敷設してテレビを見たいというニーズなし、目的はあくまでも高速インターネット化。
 (4)FTTH: ということで、(コストを無視すれば極めて常識的な)FTTH導入がベストと判断。

3.経過
 (1)平成12年度に計画策定
 (2)平成13年度2次補正で「総務省地域イントラネット基盤整備事業」を適用して先ずは村内10箇所を光接続。
 (3)平成15年度に「総務省加入者系光ファイバ網設備整備事業(モデル事業)」で全世帯をFTTH化。

4.システム概要
 村役場と3箇所の小中学校間を地域イントラネット事業で光接続し、その4箇所を拠点に各家庭までSS方式により100Mのメディコンで接続。
 村役場から上位ISPまでは茨城県ブロードバンドネットとNTTのDFを使って中継して100Mbpsで接続。
 茨城県ブロードバンドネットは県が税金で運用、県内各NTT局舎をアクセスポイントにしている。

5.音声告知放送
 LANデVoiceというシステムにより、シンプルではあるが実用的なシステムを導入。
 パソコンで音声をエンコードし、IPマルチキャストで各家庭の宅内スピーカに伝送。
 年間ランニングコストは、オフトークでは600万円が新システムでは190万円になった。

6.経費(IP音声告知システム込み)
 総額1.7億円。 その内、各家庭までの引き込み線も含めた光ファイバ敷設費用が 約1.4億円。
 電柱2,000本とのことから電柱区間は2000×50m=100km、引込区間は750世帯×70m=53kmか。
 総延長170kmとのことなので、上記推測値は補正の余地があるが、大雑把に割り返すと
 1.4億円/750世帯=20万円/世帯、  1.4億円/170km=82万円/1km

7.財源
  総務省補助金で4,000万円、過疎債の村債で8,870万円、ふるさと創生基金や宝くじ交付金で2,852万円。
  村の一般財源で1,320万円。 1.7億円のうち実に92%は国から調達している。

8.加入率推移
  音声告知放送は97.5%から97.5%とほぼ全戸に普及。
    ちなみに初期工事費相当額の個人負担は無し。月額利用料金は210円。
  インターネットは、H16年4月が15.3% H17年4月が28.2%。
    月額税込4,179円で、100Mbpsi/f、実効速度50Mbps、10MBのHPとメールアカウント1個。

  以下の考察は 追記にて。

9.考察
 (1)H12年時点で全戸に光化を、という構想を打ち出した先見性が成功要因その1。
    旧来の同軸CATV方式を選択しなかったことは実に賢明であった。
    まだBフレッツも開始されてない時代に、手探りとは言えFTTH導入に挑戦したのは見事。

 (2)その財源を9割以上国から調達できたのが成功要因その2。
    モデル事業補助は先にやるから出るのであって、知恵があり意識の高い自治体ほど有利ということ。

 (3)音声告知をIPマルチキャスト方式で実用化できたのが成功要因その3。
    ベンダーの実験場になって当初は相当苦労されたようだが、あの製品はその後あちこちに普及。

 (4)条件不利地域ではISPへの高速中継回線を調達し難いが、格安の県ネットを利用できたのが成功要因その4。
    県内のほとんどのNTT局にそのアクセスポイントがあるようだが、県民の税金が相当NTTに流れている予感。
    他県のことなのでコメントできないが、財政難の長野県ではできない芸当。

 (5)PON方式でなくSS方式にしたのが、成功要因その5。
     以下は当時のコスト比較で、SSの方が価格的にも性能的にも拡張性からも断然有利。
     
                 SS方              PON方式
     センター機器     0.5百万円           24百万円
     拠点機器       39百万円            -      
     ユーザ機器     17.5百万円          105百万円(@15万×700世帯)
     機器合計       57百万円           127百万円
     工事コスト      PON方式の方が一般的には安価であるが、今回は同程度だったらしい。
      
     速度         全ユーザが100メガbps   最大32分岐でユーザあたり数メガbps
     デメリット                         1台のセンター機器故障の影響大
                                    帯域のアップグレードをやり難い

     同一クロージャから最大8分岐可能なPON方式は、民家が点在している田舎では効果がない。
     2分岐程度ではPON装置コストがかさんで、ファイバー材料費節約効果を殺してしまうのである。

     SS方式ならば100メガのメディコンであれ、1ギガのメディコンであれ数万円で調達できるし、
     100メガで足りないユーザには、個別に1ギガメディコンに交換していけば、将来性もばっちり。
     総務省が次世代BB構想2010で目標とする上り30メガサービスのUIBNは、高価なGE-PONを
     32分岐して実現することを前提にしているようだが、
     SS方式なら100メガのメディコンでその3倍までの性能を、より安い価格で実現してしまうのである。

     なのになぜか、業界関係者は異口同音にGE-PONこそがわが国の到達点であると主張している。
     都市部で人口が多く、ユーザ数分の光芯線を電柱に張り巡らせない場合には、
     その中継区間を共用するPON方式が有利となることもあるであろうが、
     大都市以外ではその効果は期待できず、シンプルで拡張のあるSS方式が適している。
     地域の実態に合わせた機器選択を推進すべきであり、ベンダー論理は排除すべきである。

  (6)テレビ難視聴対策としてのFTTHによるIP再送信推進と言う絶好の追い風をもらえたのが、将来の成功要因その6。
    IP再送信化計画のその後の交渉経過を聞くことが今回の視察の2番目の目的であった。
    地上デジタル放送用のミニサテライト局はこの地区にもあるが、栃木県境にあるせいか電波の出力を押えていて、
    村内では地上デジタル放送を見れない!とのこと。
    相手への干渉を気にして地元で見れないのは本末転倒のような気もするが、何か他の要因があるのかもしれない。
    もっとも、電波では地デジを見れない村ではあるが、各家庭まで100メガでつながっているので、
    H.264/AVCなどという10メガ圧縮技術の開発を待たずとも、MPEG2-TSで26メガでも30メガでもIP送信できてしまうのである。
    こういう芸当はADSLでは絶対無理で、PON方式のBフレッツでも難しい。SS方式ならではである。

    総務省が7月に審議会答申を出してからIPマルチキャストに対する世の中の見方が大きく変わった。
    係長さんはいろいろあってか、具体的な作戦に関しては明言を避けられたが、
    「CATVヘッドエンドの導入は100%あり得ず、IPマルチキャストで地デジ対策をする」と言明された。
  
    もしかしたら、総務省答申のSD品質試験やHD品質試験場所はこの七会地区に内定しているのではないかと
    想像したくなるほど、IP方式による再送信条件は揃っている。

最後に。
 各家庭まで100メガの光化環境を生かした次のネットワーク利用を村に期待したい。
 音声告知放送をIPマルチキャストで実現したのは、うまい活用方法であるが、
 最後のキラーアプリであるデジタル放送の配信を是非実現してもらいたい。

 地域情報化推進の目的として、住民への動画による情報発信を挙げるケースが多いが、
 今回の七会地区ではそのような建前的な利用例を挙げてないことに好感を覚えた。
 インターネットの良さは開放型であることなので、村民イントラとしての閉じた使い方よりも、
 村外とのコミュニケーション手段にこのネットをもっとうまく生かせないものか、

 例えば、ビデオテープを役場に持ち込めば、その場でエンコードしてサーバに動画を蓄積してくれ、
 村外の家族らがVODでその動画を見れるような住民サービスはどうだろうか。
 あるいは、高品質テレビ電話システムなんかも即導入できそうだ。

 総務省が2010年に目指しているUIBNインフラが、数百戸の村で実現できていることがなんとも愉快である。
 

投稿者 佐藤 : 18:18 | コメント (1) | トラックバック

2005年10月03日

JANISが地域情報化大賞2005でインターネット協会賞を受賞

JANISが推進する信州ユニバーサルブロードバンドサービスが、日経地域情報化大賞2005でインターネット協会賞をいただきました。
  こちらがそのお知らせで、
  こちらが紹介スライドのPDFです。

これまで何度もあちこちでご紹介してきたスライド集ですが、
最後の数枚は、次期県WAN受注に向けてのJANISの拡張計画のサワリです。

あまり細かく記述すると差し障りが出てきそうなので、今回は概要だjけですが、
全市町村まで1ギガbpsのEOE拡張VLANサービスを展開するという壮大?な計画で、
L2でもL3でもMPLSでもなんでもござれ、というウルトラサービスをウルトラ価格で提供予定。

こういうサービスを提供できるのも、これまでの信州ユニバーサルブロードバンドサービス構想の積み重ね。
何年もかかって、やっとここまで来た!というのが本音。ゴールまであと一息か。

投稿者 佐藤 : 17:59 | コメント (0) | トラックバック